実際に所有するまで知らなかったことですが、車をリフトアップすると色々と弊害が起こることが分かったので記録しておきます。
昔のランクルとかジムニーのようなガチめの四駆には「ホーシング」という車軸とデファレンシャルギアが一体となったものが付いてます。
トラックとかにもついているので、耐久性が求められる車に採用されることが多いようです。
ホーシングは通称:デフと呼び、ノーマル状態ではトランスファー→プロペラシャフト→デフがほぼ一直線状になるように配置されています。
これをリフトアップすると下図のようにプロペラシャフトに角度が付きます。
可動部はユニバーサルジョイントという角度を吸収できるジョイントで接続されているので、ある程度のリフトアップ如きでは支障は出ません。
しかし、“ある程度”を越えてしまうと異音や振動が発生してしまいます。
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振動・異音の原因はくずれた角度
不快な異音や振動が発生する多くの原因は、リフトアップによって崩れてしまった“各部の角度”です。
トランスファーからの回転はプロペラシャフトによってデフに伝えられますが、それぞれを繋げているのはユニバーサルジョイントです。
ユニバーサルジョイントは角度が付いても回転が伝達されますが、その角度によって回転にムラが出てしまいます。
「は?何を言ってるんだ?」と思ったら、下の動画を見てください。
非常に参考になります。
ユニバーサルジョイントに角度をつけると回転にムラがでる。
しかし、さらに同じ角度をユニバーサルジョイントで繋げばムラは相殺される。
回転が伝達されている訳だから、当然同じ回転が伝わっていると思ってましたよ…
それが角度によって回転ムラが出るなんて…、しかも2つが同じ角度になると相殺されることにも驚きです。
これ学校で習ったかな?と思い出そうとしても全く覚えていません。
たとえ教えられていたとしても、覚えてないという事は生活面で必要性を感じていなかったからだと思うわけで、先生たちには教え方をもっと変えて欲しいと思う。
普通、車は段差を越えたり、荷物を載せたりすると若干車高が変わりますよね。
メーカーの設計では、それでも問題が無いように“ある程度”の範囲なら、それぞれの角度が同じになるように設計されているはず。
角度が同じであれば、各回転のムラは相殺されて振動は発生しないわけです。
ということは逆に、リフトアップする場合は2つのユニバーサルジョイントの角度が極力同じになるように調整しなければならないという事になります。
リフトアップキットには「ショックとスプリングのみの安価な物」や「各種アームの付いたフルセット(高いヤツ)」など色々あります。
フルセットの物はアーム類でデフの角度が同じになるように調整されている(もしくは調整できる)はずですが、ショックとスプリングでとりあえずリフトアップした場合、アーム類は純正のままなので、下図のようにデフ側の角度が変わってしまいます。
どう角度が変わってしまうかは構造によって異なりますが、こうなってしまうと回転のムラが上手く吸収できず、そのムラは高速回転することによって振動に変わります。
それがデフやトランスミッションに伝わり、不快な異音や振動と認識される。
しかもその影響の大小は、各車両ごとのギアの噛み合わせやバックラッシュなどにも関係していると思います。
これを解決するにはデフ側にプレートを挟む、アームを変更する、ミッション位置を少し下げるなどして角度を調整する必要があります。
プロペラシャフトの長さが足りない
大幅なリフトアップをした場合、角度が調整できたとしても物理的にプロペラシャフトの長さが足りなくなる場合があります。
そうすると、常にジョイントやベアリングなどに負荷がかかるので、また別の場所での異音の原因にもなります。
その場合は社外の長いプロペラシャフトに交換する、もしくはプレートなどで延長するしかないでしょうね。
ダブルカルダン・プロペラシャフト(等速ジョイント)
プロペラシャフトに角度が付きすぎてしまう場合は「ダブルカルダンシャフト」に交換する方法があります。
ダブルカルダンはUジョイントが2つ並んでいて回転ムラを打ち消してくれるので、等速ジョイントとも呼ばれています。
この等速ジョイントを取り付ける事で角度の緩和につながりますが、導入するにあたっては注意点があります。
一方のジョイント部の回転が等速になるわけなので、もう一方も等速ジョイントを付ける、もしくは回転が同じになるように一直線上にしなければなりません。
一般的なダブルカルダンのもう一方は普通のUジョイントになっているので、デフの角度を変える必要があり、そのための部品(ラングラーの場合は調整式のアーム)に変更する必要があります。
さらにデフの角度を変えると、デフの横方向の位置を調整するラテラルロッドも交換しなければならなくなる可能性が非常に高いです。
さらにショックの取り付け部の形状によっては、各部との干渉を避けるために追加のブラケットを取り付ける必要が出てきたりします。
スプリング受けの角度も限界ならスペーサーが必要になることもあるようです。(ジムニーなんかはそう?)
何を隠そうこれは私のラングラーの事なんですが、知らずにダブルカルダンにしたせいで後戻りできなくなりました。
アームやショックのブラケットはどうにか入手できたのでひとまず安心ですが、ラテラルロッドはすでに調整式の物が取り付けてあるにもかかわらず、少々干渉しているので、交換、もしくは追加のブラケットを取り付ける必要がありそうです。 少しミッションダウンすることでデフの角度を緩和できたのでラテラルロッドの干渉は無くなりました。
ちなみに等速ジョイントを取り付けて、デフの角度を直線に調整しなかった場合、低速時はゴロゴロと確実に異常だと分かる状態になり、さらに速度を上げていくとひどい振動へと変化しました。
角度には気を付けましょう。
なんやかんや言っていますが、デフの角度を調整した後は実に滑らかな回転になりました。
結果的には交換してよかったと思います。
剛性も上がったしね。
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